2019-37 劇 場  又吉直樹

 漫才師、又吉直樹の2つめの作品です。出版されたのは2作めですが、実は書き始めは、芥川賞を受賞した1作の「花火」よりも先なのだそうです。
演劇の脚本を書いている一風変わった永田とその恋人沙希のこれもちょっと変わった付き合いを通して、主人公である永田の人間の内面性を描いた作品と言えるような気がします。演劇や芸人とは、我々一般人からすると、その生活ぶり、考え方、行動は普通ではないような気がします。ただし、何が普通なのかという問題はあるとかは思いますが。とりあえず、私を普通とした場合には、普通ではないといえます。その普通の人から見れば変わっているところを、当人の内面から表現しており、その異常な言動や行動の理由が何となく理解できるような気がしてきます。そして読み進むうちに、自分でもどうしようもできない永田に対し徐々に同情のような感情がわいてきます。最後には二人の関係が切なく感じてしまいました。
ところで、主人公の永田は、ところどころ著者の又吉と重なるところがあるような気がします。もしかしたら、この本に出てくるようなことを経験してきているのではないだろうか、と思いました。

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