2020_12 さまよう刃 東野圭吾
かけがえのない娘(長峰絵摩)を不良少年に強姦されたあげくに殺された父親、長峰重樹。謎の密告者から犯人のアパートの住所を知らされ、そこで、強姦される娘のビデオを見てしまう。犯人は二人、そして帰宅した犯人の一人を無残に殺害し、もう一人にも復讐することを決意する。
ビデオには二人の少年が写っていたが、拉致した時にはもう一人共犯者がいた。しかし、強姦、殺人には関与していない。ただ、手を貸したのは事実であり、姿をくらました主犯恪の仲間からおどされる。
長峰は、もう一人の犯人の居場所を聞き出し長野へ向かう。長野で宿泊したペンションの従業員の女性が、殺人犯と気づきながらも協力する。しかし、もう少しのところで警察に先を越されてしまう。あきらめて自首を決意するも、また謎の密告者から、犯人が上野駅に現れるとの連絡があり、最後のチャンスと上野に向かう。警察も取り逃がしていたのである。
娘を殺された父親の心境、強姦殺人に手を貸してしまった仲間の心理、強姦殺人犯の少年とその犯人に娘を殺され犯人の一人を殺した父親との両方を追う警察の葛藤、そして殺人犯と知りながら助けてしまうペンションの女性の本当の気持ち。全体を通して、少年法を元に、正義とは何かが問われているように思いました。
最後は、やはりどんでん返しがありました。大きなどんでん返しではありませんが、東野さんに騙された、というような感じです。一部読み直してしまいました。
「さまよう刃」という題材から、復讐に燃える殺人鬼と化した犯人が登場するのかと思いましたが、そうではありませんでした。さまよっているのは犯人を裁く人あるいは方法であるように思います。