2020_23 魔王 伊坂幸太郎

 「魔王」と「呼吸」という題材の繋がった物語から構成されています。前半は何事も深く考えるという理屈っぽい性格の安藤兄の生き様、後半は直感的に生きる弟の潤也とその妻の物語で、兄の死後5年後の物語です。
魔王という題名から、何かものすごい力を持った主人公が出てくるのかと思いながら読み始めましたが、全く想像と異なりました。第二次世界大戦でのイタリアのムッソリーニ、ドイツのヒットラー、群衆はこうした人たちに知らず知らずのうちに先導されてしまいましたが、現代の日本においてもそうしたことが政治的に起こりうる可能性があるのではないか。憲法改正を題材にそんな投げ掛けをしてるように感じました。
二人の兄弟は、それぞれ特殊な能力を持っていることに気づき、それを活用しようと考えます。兄は死んでしまいましたが、弟はこれから何かしてやろうというところで物語は終わっています。兄が魔王なのか、それともこれから弟が魔王になっていくのか、あるいはカリスマ政治家の犬養なのか、もしかしたらほかに何か別のものが魔王なのか、読者に考えさせるような内容であるとともに、どこかもやもやした感じでした。

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