2020_2 小説 渋沢栄一(上) 津本 陽

 渋沢栄一は埼玉出身でありながら、その生き様について詳しくは知りませんでした。来年の大河ドラマで放映されるということで先んじて読んでみることにした次第です。上巻では幼少から青春そして30歳代くらいまで、幕末から明治の維新真っただ中までが書かれています。元々は養蚕などを営む農家に生まれ、藍の売り歩きで商売を学び、幕末においては攘夷運動にも参加していました。ところが、あの徳川慶喜の一橋家に仕官することになって人生が変わっていきます。元々時節を読む能力があったのと、体力もあり頭もよかったようです。そして、パリ万博の使節団に慶喜の弟が派遣されるにあたり、慶喜から旅程の裏方をおうせつかります。このことで幕末から維新にかけての約3年間をヨーロッパで過ごすことになります。大政奉還が行われたとき、渋沢栄一はフランスにいました。この欧州での見聞と知識が後の渋沢栄一の偉業に影響を与えたことは間違いありません。欧州から帰った後、一旦は慶喜のもとで過ごそうとしますが、世間が放っておきませんでした。その欧州見聞の知識と事務能力を買われ新政府の中枢で政府の根幹となる法令や銀行創設などの政策にかかわります。しかし、元々民間で殖産興業に尽力したいという希望をもっていたため、上司の井上馨の辞職に呼応し政府を辞任してしまいます。すると今度は、自ら基礎を作った国立第一銀行を任されることに。上巻で、渋沢栄一が日本の産業の基礎を築いた経緯が少し分かったような気がします。

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