2020_29 陽だまりの天使たち 馳 星周
陽だまりの天使とは、人に癒しを与えてくれる犬たちのことです。飼い主と犬の心温まる、あるいは涙、涙の7つの短編集です。我が家でもかつてウェリッシュコーギーを飼った経験があり、15歳というコーギーにしては長寿の生涯を見送った経験から思わず涙をこらえるよう場面が多々ありました。
第1話、13才の白血病の少女千尋が犬の保護施設で選んだ犬は、誰にも心を許さなかったトイプードル。なぜか千尋には従順でした。そこには何とも言えぬ不思議な理由がありました。第2話、妻が病気で亡くなり、妻が飼い主として育てていたミックス犬シロとの生活がはじまる。あるとき天然記念物のヤマネコの赤ちゃんが迷い込み、シロが面倒を見始める。犬とヤマネコとの生活の中から、妻を亡くした寂しさを振り払い、再スタートをきる物語。第3話、視力を失った作家、里中保のもとに、ラブラドール・レトリーバーの盲導犬ジョーヌがやっくる。保の姉が手配したものである。視力を失ってからかたくなになっていた心をジョーヌが解きほぐしていく。第4話、生まれてすぐ母犬に噛まれ、ゆがんだ顔と脳に障害を持ってしまったバセット・ハウンドのアンジュ、アンジュとはフランス語で天使という意味、見てくれとは違い、まさに天使のようなアンジュが人を癒していく。第5話、腫瘍で前足を切断せざる得なくなったフラットコーテッド・レトリーバーのエマ、前足がなくなったことを感じさせないくらい元気に生活できるようになったが、癌が再発、その切ない結末は涙、涙です。第6話、会社が倒産、妻とも離婚、すべてを失いホームレスになった男が、自殺をしようと思っていたところに、飼い主に捨てられたフレンチブルドッグと出会う。この出会いが男の人生を変えていく感動の物語。第7話、バーニーズ・マウンテン・ドッグ、著者が飼っている犬種とのことで、著者の思いが込められているようです。
どの物語も犬の健気さが伝わってきて、感動ものです。以前犬を飼っていたころのことを思い出しました。