2020_30 神話の密室 知念実希人
驚異的な診断能力を持ち、どんな病気も見抜いてしまう若き天才女医、天久鷹央(あめくたかお)。彼女のもとで研修医として勤務する小鳥遊優(たかなしゆう)を通し不可解な病気や死因について解き明かしていく医療ミステリー。シリーズ本ですが、ここには、二つの医療事件の話が納められています。
第1話は、ある有名推理作家がアルコール中毒で入院、お酒のない密室ともいえる病室でなぜか酔っぱらっている。鷹央は、その患者に酒を飲ませるという本来あり得ない治療法を行う。どうして酒を飲ませたのか。そこには思いもよらない理由がありました。2話めは、小鳥遊の大学時代の空手部のコーチであったキックボクサーの早坂翔馬が、日本チャンピオンとタイトルマッチを行うということで試合を観戦する。壮絶な試合の結果、逆転で勝利するが、チャンピオンベルトを着けたところで崩れ落ち、応急処置もむなしくなくなってしまう。ところが、死因を調べても、脳や内臓に出血などの異常は見当たらなかった。試合前に、「殺される」と言っていたことが明らかになる、不治の病だったとのではという疑念も湧き上がる。果たして事故死なのかあるいは多くの観客の見つめる中で殺人が行われたのか、はたまた病によって命が絶たれたのか。少し悲しい切ない話です。全体的には喜劇的な内容で、おもしろ医療ミステリーとでもいうような内容でした。