2020_7 暗幕のゲルニカ 原田マハ
ピカソの「ゲルニカ」とは、空爆を受けたスペインの町ゲルニカの惨状を描いたものであることは何となく知ってはいましたが、この本を読んで、ゲルニカのが描かれた意味、ピカソの思いを改めて知ることができました。
本書は時代を隔てた二つの物語が並行して進められます。一つはゲルニカが描かれた第二次世界大戦の頃、もうひとつはニューヨーク同時多発テロが起きた現代。70年を隔てた物語は、「ゲルニカ」を中心にシンクロしていきます。「ゲルニカ」が描かれたのは1937年、ピカソの故国であるスペインの街ゲルニカへが無差別攻撃を受けたことに怒りを込めて一気に書き上げたもの。その問題作ゲルニカの数奇な運命が語られます。一方、ニューヨーク同時多発テロで夫を亡くしたMoMA(ニューヨーク近代美術館)でキュレーター(企画者)を務める八神瑤子が、テロとの戦いとして戦争を起こそうとするアメリカに対し、反戦の意思表明としての展覧会「ピカソの戦争」を企画、そこに不可能と言われたゲルニカの展示を企てる。果たしてゲルニカを展示することはできたのか、最後はサスペンス的な展開にもなっています。解説は池上彰さんによって書かれていて、池上さんも書いていますが、本書はアートはどれだけの力があるのか、戦争を阻止する力を持っているのかを問いかけているようです。