2020_8 海の見える理髪店 荻原 浩
この作品、直木賞受賞作品です。家族にまつわる6つの短編集。様々な家族の生き様、関わり合いから将来に向かって何かを信じ生きていくことを語かたりかけています。
一遍めは、題名にもなっている「海の見える理髪店」結婚を控えた主人公の男性が、田舎の理髪店を尋ねる。店主はやけに饒舌で人生を語り続ける。そこには語り続ける理由がありました。二編目は「いつか来た道」、折り合いが悪い母と娘の話、16年ぶりに実家を訪ねた母親は痴呆症に・・・・。三編目は「遠くから来た手紙」、結婚三年、夫と姑との生活につかれ実家に帰ったもののそこには弟夫婦がおり居場所がなくなっていた。隠しておいた結婚前に夫とやり取りした手紙を処分しようとするが・・・・。四編は「空は今日もスカイ」、主人公は小学3年生の茜、両親が離婚その後父親は亡くなり母親とともに親戚の家に身を寄せるが、いずらくなり家出して海に向かう。途中、親の虐待から逃げてきた12歳の少年と出会い一緒に「海の家」を目指すが海の家はない。そこでホームレスに助けられ一夜を明かすが・・・。五編は「時のない時計」父親の形見に動かなくなったブランド品の腕時計を商店街の時計屋に修理を依頼する。時計屋の店主にも時計にかかわるエピソードがありました。最後の六編は「成人式」、高校生だった一人娘を交通事故で亡くて5年、ふさいだ生活をおくっていたが、娘あてに成人式の晴れ着のカタログが届く、なんと二人で成人式に出ることに、自虐的でもあり喜劇的でもあり、心温まりました。