2020_9 虹を操る少年 東野圭吾
題名は「虹を操る少年」ですが、内容は「光」を操るといったほうが妥当ではないかと思える内容でした。主人公である白河光瑠(みつる)少年は、生物が発する光を見ることができます。そして自らもメッセージとしての光を発することができます。本来誰にでも備わっている能力ですが、光瑠は特にその能力に優れ、その光から気持ちや感情を読み取ることができます。この光は、いわゆるオーラと呼ばれるもので、歴史上にその能力に猛けた人たちいがいました。いわゆる宗教の教祖となった人たちです。確かに、キリストは光に包まれ、仏像は後輪を背負っており、人々の放つ光から話を聞かずとも考えていることや悩みが分かり、人々を救えたと考えると納得がいきます。そんな能力を持った光瑠は、こうした能力を人々に引き出させようとします。光によるハーモニー、音楽ならぬ、「光学」で語り掛けます。それは病みつきになり、一種の「麻薬」的効果があります。その能力を利用しようとする「組織」、壊滅させようとする「組織」、光瑠に危機が迫ります。最後は、人類はどうなっていくのだろうかという想像を掻き立てるものになっています。東野さんの想像力はどうなっているのかと驚かされます。