2019-32 百年先が見えた男 江上 剛
ミラバケッソと訳のわからない言葉のコマーシャル、クラレ、旧倉敷レーヨンのコマーシャルです。この会社の戦前戦後、激動の時代に社長を務めた大原總一郎の物語です。總一郎の父親、孫三郎が、戦前に倉敷レーヨン、倉敷絹織など会社を大きくし、總一郎が引き継いだ。父親と対立していたものの病床の父親の情に負けて後を継ぐことに。そして、日本独自の合成繊維、ビニロンの開発に注力する。しかし、満州事変、太平洋戦争と激動の時代になり、会社は解体されてしまう。戦後、残った会社で再びビニロン開発に情熱を傾けていく。總一郎は、戦中徴兵されるが病気で除隊、工場を軍事工場として稼働させるが、空襲で従業員を失ってしまう。このうしろめたさ、贖罪の念が總一郎を突き動かしていく。終戦間もなく、アメリカで開発された合成繊維ナイロンが普及し、他社がビニロンから撤退していく中で、国産材料によるビニロンの開発にこだわっていく、そして国から途方もない金額の融資を引き出し、量産化を執念で成し遂げる。その後、ビニロンプラントを中国へ輸出することをもくろむ。日中国交回復前、米ソ冷戦時代、台湾の問題もあり、実現不可能と思われた。しかし、總一郎は様々な困難を乗り越え達成してしまう。總一郎の思い、思想、人間性などにより、不可能を可能にしてしまった。こうした總一郎の思想は、現在のクラレにも引き継がれているとのこと。人がやらないことをやれ、企業には社会的責任がある。そして、従業員は幸せになるために働いている。働いてけがをしたり病気になって不幸になるようなことがあってはならない、だから安全は何より最優先されるべきだ。分かりやすい考えである。大原總一郎という人物、クラレという会社を見直しました。