2020_3 小説 渋沢栄一(下) 津本 陽

 明治維新のどさくさ、役人を退職し第一国立銀行頭取になってからのすさまじいまでの起業活動。銀行だけでなく500を超える様々な事業団体を立ち上げ、昭和6年92歳でこの世を去るまでの半生が描かれています。日本の産業の基礎を築いたといっても過言ではないでしょう。その役職たるや、今では考えられない、どうやってこなしていたのかと思われるほどの多くの役職を兼任していました。渋沢栄一の信念には、個人の利益ではなく日本国を世界に肩を並べる国にして国民を幸せにすることにあったようです。儲けようと思っていれば、莫大な財産を築けたはずであり、財閥に名を連ねたでありましょうが、そうではありませんでした。時代背景もありますが、このような人物は二度と現れないだろうと思います。また、この小説は産業界からの視点で書かれているところがあり、私には興味深かったです。例えば、岩崎弥太郎が作り上げた三菱は、海運業で大きくなりましたが、そこには壮絶な値下げ合戦の末の勝利の結果勝出会ったとか、西南戦争がさらに追い風になったとか、など。明治の頃は、国が事業を立ち上げ、民間に委譲した事業が意外と多かったなど。

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